米国のコア不動産は歴史的に魅力的な水準
AEW(北米)のポートフォリオ・マネージメント・ヘッドであるサラ・キャシディ氏は、現在はここ数年の中でも、米国コア不動産への投資参入するのに最も良いタイミングである可能性が高いとみています。不動産評価額は金利上昇等を背景に調整したものの、現在は再び上昇し始めていることから、トータルリターンの向上が見込まれると話します。
本稿では、なぜ現在、米国のコア不動産が「非常に魅力的」に見えるのか、またこの好機がいつまで続く可能性があるのかについて、サラ・キャシディが語ります。
Q: コア不動産とは具体的にはどのようなもので、他の不動産投資と比較してどのような位置づけにあるのでしょうか?
サラ: コア不動産は、商業用不動産投資において、最もリスクが低く、最も安定したセグメントです。予測可能な長期的な収益を生み出すことを目標に、優良な一等地において、良好な賃貸契約が結ばれている物件に焦点を当てています。リターンの構成要素としてコアの収益は主に賃料収入に由来し、資産価値が上昇するとリターンの割合は低くなります。また、リスクが低いことを考慮すると、レバレッジも一般的に低くなります。LTV(ローン・トゥ・バリュー比率)は50%以下になるでしょう。また、最も流動性の高い資産クラスであり、景気サイクルのどの局面においても売却できる可能性が高いと言えます。
Q. 現在、米国のコア不動産には歴史的に見て魅力的な参入ポイントであると述べていらっしゃいます。なぜそう言えるのでしょうか?
サラ: まず、市場の背景を理解することが重要だと思います。米国では、金利の低下と着実なGDP成長が続くという、極めて異例な15年間が終わりを迎えました。投資市場にとって、これ以上に好条件な状況はそうそうありません。
私たちは現在、そのサイクルの段階を脱し、極めて低い金利環境から、高い金利環境へと移行しました。また、過去の約2年間にわたり、プライベート不動産が下降局面の時期もありました。2022年末頃から2024年末にかけては、金利の上昇が市場に浸透し、資産クラス全体で必要な資本コストが上昇したため、不動産のトータルリターンにとってはかなり厳しい時期でした。
しかし、現在はそうした局面を脱しています。10年物国債利回りは安定しており、投資家にとって価格設定や投資判断がより明確になっています。また、米国の商業用不動産の動向としてとらえられるODCE指数(米国プライベート、コア分散型のベンチマーク)といった不動産価格の指標は長期間にわたる価値の下落を経て、2025年末までに6四半期連続でプラスのトータルリターンとなっています。
加えて、非常に説得力のある広範な指標もいくつか見られます。現在の不動産利回りは、2014年以来の最高水準にあります。ゴーイング・インのキャップレート(取得時のキャッシュ・フローを基にした割引率。将来のキャッシュ・フローの成長は反映しない)は100ベーシスポイント以上上昇しました¹。また、ODCE指数(米国プライベート、コア分散型戦略のベンチマーク)のトータルリターンをみると、150ベーシスポイント以上の上昇がみられます²。つまり、過去2年間における金利の上昇が再評価をもたらしたのです。そして、この再評価により、不動産価値は平均で約25%下落しています³。
つまり、金利は上昇し、期待リターンは高まっている一方で、価値は下落しているのです。不動産価値をインフレ調整して見ると、その価値は世界金融危機以来の最低水準にあります。全体として非常に説得力のある指標です。
また、現在の不動産価格水準を見ると、その多くは平均して再調達コストを大幅に下回っています。つまり、建設するよりも購入する方が、コスト効率が良いことから、供給が生じるまでにはさらに長い時間がかかることになります。このように、特に質の高いコア不動産にとって、歴史的に魅力的な参入ポイントとなっていることを示す、非常に興味深く説得力のある指標が数多くみられるのです。
Q. こうした状況を受けて、米国不動産への資金流入が増加していると感じますか?
サラ: はい、その通りです。私たちは長年にわたり、不況期に何が起きているかについて投資家と話し合ってきました。底値を正確に予測するのは非常に難しいことですが、底値またはその付近で資金を投入することができれば、その後の回復局面は投資家にとって非常に有益なものとなります。
投資家は景気後退を認識しており、評価額の調整ペースが鈍化し、それらの指標が安定化していることも認識しています。その結果、新たな資金が流入し始めています。私たちは、投資家のセンチメントの変化を強く感じています。運用会社の選定が増え、コア資産への新規配分が行われ、全般的に前向きな期待が高まっていることで、新たな資金が流入しているのです。
Q: この好機は、あとどれくらい続くと思いますか?
サラ: 回復のサイクルとしては、まだ比較的初期段階にあると思います。先ほど触れた「評価額対再調達コスト」という単一の指標だけを見ても、平均して再調達コストを15~20%下回っている状況であれば、新規建設が実質的に増加するまでに、数年間の成長余地があることを示唆していると考えます。そして、不動産の基本に立ち返れば、すべては需給の問題です。新規供給の重圧がない限り、成長が見込まれます。供給が再び増加し始めるまで、その成長の恩恵を受けられる十分な期間が数年間はあると考えています。
1 出所:Altus Group, ODCE metrics, 2025年12月31日現在
2 出所:Altus Group, ODCE metrics, 2025年12月31日現在
3 出所:NCREIF, 2025年12月31日現在